「新品の弦に張り替えたのに、なぜかハイポジションのピッチが合わない…」、「自分のギターが壊れて(ネックが反って)しまったのではないか?」。もしあなたがそう感じているなら、それはプロアルテ弦の『品質不良ロット』が原因かもしれません。最近海外サイトを中心にプロアルテの音程や音質が悪い個体が多いという報告が相次いでいました。その原因と現状についてまとめたいと思います。
プロアルテ = 安定感が高くて鉄板のはずが…
昔からのクラシックギター弾きにとってダダリオのプロアルテといえばこれを選んでおけば間違いないという弦でした。
一般的な昔ながらの弦の認識は以下の通りでしょうか:
| 弦 | 長所 | 短所 |
| オーガスチン | 甘い音の高音弦、迫力ある低音弦 | 高音弦の音程が悪すぎる |
| サバレス ピンクラベル | 研磨弦による音程の良さと音の歯切れの良さ | 研磨弦のざらざらによるノイズが気になる |
| ハナバッハ | 音程が良い、音の見通しが良い | 価格が高い |
| ダダリオ プロアルテ | 音程が良い、不良弦が少ない | 音に個性がない |
弦の値段が安いこともあって、プロアルテはオーガスチンと人気を二分する存在だったように思います。
ところが、2023年から2025年にかけてプロアルテの高音弦に関する品質不良情報が世界中で出回りました。
単に品質不良の情報が出回るわけではなく、プロアルテの在庫が公式サイトや主要楽器店でなくなるなど、かなりの異常事態となりました。
日本ではさほど話題になりませんでしたが、この問題を含む弦がもしかしたら日本でも今後で回る可能性がありますので、原因や経緯についてまとめたいと思います。
なお、記事内では「プロアルテの高音弦」と書いていますが、同じ高音弦を使うXTシリーズも影響を受けています。

ダダリオの弦についてはこちらの記事で詳しく解説しています。実際に使ったレビュー記事も多数あります:
長期間にわたる不良ロットの市場流出
まずはこの不良弦問題がどのようなものなのか解説します。
高音弦の音程不良と音の濁り
この問題は主にプロアルテの高音弦で報告されました。
具体的な症状は以下のとおりです:
- 開放弦で調弦してもハイポジションで音が合わない。音のずれは最大で約1/4(45セント)に達する。
- 基音に対して倍音がずれており、音が濁る
特に音程のずれは致命的で、1/4音もずれたのでは音楽になりません。
倍音のずれに関しては、単音を弾いた後に音が小さくなっていくと一瞬音程が30セントほど上がり、そのあと元に戻るという不安定さが観察されました。
太く乳白色に濁った3弦
また、3弦に関しては明らかに見た目がおかしいものもありました。
プロアルテの高音弦は本来透明であるはずなのですが、明らかに太くて乳白色に濁った弦が存在したとのことです。
以下がその写真で、3弦だけ違う弦を張っているのでは?と疑いたくなるレベルといえます:

もちろん音は悪いそうです。
ギターを疑って修理に出すユーザーが多く出現
ダダリオのプロアルテといえばクラシックギター弾きにとってその品質には絶対の信頼があります。
このため、あまりにも音程の狂いが大きいことからネックの反りやブリッジ・サドルの問題を疑い、ギターを修理に出すユーザーが多く出現しました。
もちろん結論から言えば弦の問題だったわけですが、プロアルテ弦に対するユーザーたちの信頼の高さがうかがえるエピソードです。
不良弦に対するダダリオの対応
この問題を受けてダダリオがどのような対応をとったかについて解説します。
市場からプロアルテ弦の在庫が消えた
この問題がRedditなどで大きく盛り上がった結果、プロアルテ弦の在庫が公式サイトやStrings by Mailなどの楽器店から消えました。
ダダリオの公式発表はありませんが、不良ロットを市場から排除するため「サイレントリコール」が行われた可能性があります。
また、この時期にアメリカのトランプ政権による輸入品の関税増が発生し、ダダリオはその対策に追われました(出展:Guitar World)。
プロアルテ弦の製造そのものはアメリカ国内で行われているものの、たとえば低音弦に使われている銅をアメリカは輸入しています。
また、アメリカ国内のダダリオの施設に自由貿易地域の申請を行うなどしたそうです。
この2つが重なった結果、プロアルテ弦の在庫が一時的に市場から消えた可能性があります。
ダダリオ公式アカウントが品質不良を認める
プロアルテの高音弦の問題に対しダダリオは長らく公式見解を出していませんでしたが、2026年2月にダダリオ弦のプロダクトマネージャーであるGabe氏がReddit上に品質問題を認めるコメントを出しました:

Gabe氏のコメントを翻訳して要約すると以下の通りです:
- ダダリオの品質基準を満たさないクラシックギター用高音弦を含む製品が市場に流通していることが2025年後半に確認された
- 弦の素材や製造プロセスを改善し、現在では品質問題は解決している
- 品質に問題がある弦に当たった場合はカスタマーサービスチームに連絡してほしい
正常品への交換によって顧客満足度を維持
カスタマーサービスチームへ実際に連絡したユーザーの話によると、不良弦の報告をしたところ何の質問もなく正常品と交換してくれたそうです。
この手の問題ではよく、「不良弦は製造上どうしても起こってしまう」というような言い訳で交換を渋るメーカーがありますが、ダダリオは割り切った対応で顧客満足度を維持したといえるでしょう。
偽造品との区別に注意
今回の不良品問題について1つ注意しなくてはならないのが、偽造品との区別です。
ダダリオの弦は世界中で人気があるため偽造品が出回っており、プロアルテも例外ではありません。
今回の不良品問題でも、音程や音質の不良を報告したユーザーの中には偽造品をつかまされていたケースがありました。
ダダリオはクラシックギター弦メーカーの中では最も強く偽造品対策に力を入れており、シリアルコードをWebサイトに入力すると偽造品かどうかを判定できます。

クラシックギター弦の偽造品とその対策については以下の記事をご覧ください:
日本のプロアルテへの影響は?
この問題の日本への影響について解説します。
日本ではあまり話題にならず
この問題は世界中で話題になったのですが、不思議なことに日本ではあまり話題になりませんでした。
可能性はいくつかあります。
- 日本向けに輸出した在庫はたまたまこの問題を含まないロットだった
- 日本には潤沢に在庫があり、問題が発生した時期に輸入が行われなかった
- 輸入は行われたがユーザーのもとに届く前に回収された
いずれにせよ、日本で多く出回っている正規代理店(キョーリツコーポレーションやサウンドハウス)経由のプロアルテに関しては大規模に不良品問題が起きていないように思います。
ただ、並行輸入品、特に格安のものに関してはもしかすると不良ロットが販売されているかもしれません。
偽造品対策の記事でも述べましたが、弦はできるだけ国内正規流通品の購入をおすすめします。
万が一不良品に当たった場合、当サイトに情報をお寄せいただいた方の話では販売店に連絡したら正常品と交換してくれたそうです。並行輸入品は代理店が保証してくれないので、店によっては交換を断られる可能性があります。
追記:日本でも不良弦に当たった人は多くいるようです
あまり話題になっていなかったので日本では不良弦は出回らなかったのかと思っていたのですが、X(旧Twitter)上で不良弦に当たったというコメントをくれた人が複数いました:
コメントしていただいたのは一部の方ですし、そもそもこの記事を見てるのも少数でしょうから、意外と多くの方が日本でも不良弦に当たったのかもしれません。

もし不良弦の経験がありましたらXでコメントやリポストいただくか、お問い合わせフォームから情報をいただけると幸いです。
プロアルテを避けてほかの弦を試すなら?
日本のプロアルテ在庫が100%安全といえない以上、ほかの弦を試したいという方もいるかもしれません。
そんな方にお勧めの弦を紹介します。リンクは当サイトのレビュー記事になっていますので
プロアルテ ダイナコア/カーボン、XTシリーズのチタニウム/カーボン
同じダダリオであればプロアルテ ダイナコア/カーボン、あるいはXTシリーズのチタニウム/カーボンがおすすめです。
これらは高音弦がナイロン弦ではなくチタニウム弦やカーボン弦になっています。品質不良が発生したナイロン弦ではないので、ダダリオですがこの問題には当たりません。

チタニウム弦やカーボン弦についてはこちらの記事をご覧ください:
ただし、低音弦がナイロンのプロアルテとは異なり、コンポジット素材の芯線を用いており現代的な音がします。
決してナイロンのプロアルテと同系統の音ではない点には注意してください。

ダダリオの弦についてはこちらの記事で詳しく解説しています。実際に使ったレビュー記事も多数あります:
ラベラ 2001
比較的プロアルテ ナイロンに近い音といわれているのがラベラ 2001です。
アンドリュー・ヨークが使用している弦としても知られ、日本のプロにも愛用者が多いです。

ラベラの弦についてはこちらの記事を参照ください。レビューも多数あります:
サバレス/ノブロック
思い切って最近人気のあるサバレスやノブロックの弦を試してみるのもおすすめです。
プロアルテも良い弦ですが、サバレスのカンティーガプレミアムやノブロックは新素材の使用などにより音が出しやすく、かつ長寿命で使いやすいです。

サバレスやノブロック弦は以下の記事にまとめてあります:
ダダリオは今後も信頼できそう
今回の問題について調べていて感じたのは、ダダリオは今後も信頼できるであろうということです。
2023年後半からということで解決には時間がかかりましたが、不良弦の正常品への交換は無条件で行い、最終的に公式見解を出すなど、品質に対して前向きでしっかりした対応を行ってくれました。
製造業では予期せぬ、場合によっては自社の責任ではない不良が起きますが、それに対する対応でユーザーの忠誠度が大きく変わります。
今後もクラシックギター弾きにとって第1選択となるメーカーであり続けてほしいものです。







