クラシックギターに限らず、ギターはこれまで身体に固定して弾くのが常識でした。それによって身体に負担をかけたり、ギターの音が身体に吸収されたりといったデメリットがあるものの、ギターと言えばこういうものという思い込みがそれ以上の発展を阻んでいたように思います。新しく発売された「UpGuitarbus」はその常識を覆す、空中でギターを弾くための立奏用支持具(スタンド)です。

クラシックギター用の支持具についてはこちらの記事でまとめています:
足台、支持具、そしてその先へ
セゴビアの時代あたりからクラシックギターといえば足台を使って演奏するのが当たり前でした。
その後、身体への負担を減らしたりよりギターの音を響かせたりといった目的でさまざまな支持具が考案され、プロの間でも広く使われています。
また、さらには立った状態でクラシックギターを演奏する「立奏」も一部のプロが取り入れ、市民権を得つつあります。

立奏についてはこちらの記事をご覧ください:
しかしながら、エレキギターやアコースティックギターを含め、「ギターは身体で支えて弾くもの」という概念からは脱し切れていません。
身体で支える以上、多かれ少なかれ身体への負担や音の減衰は避けられないでしょう。

足台と支持具の比較についてはこちらの記事で詳しく紹介しています:
ギターを空中に固定して演奏する「UpGuitarbus」
そんな常識を覆す新しい支持具がフランスから登場しました。その名も「UpGuitarbus」です。
スタンドにギターを載せて固定
UpGuitarbusはスタンドの上にギターを載せて固定する支持具です。
以下の写真のように、三脚の上にギターを載せて演奏します:

足台やこれまでの支持具のように身体でギターを支えるのではなく、ギターの重みはすべてスタンドで支えます。
これによって身体への負担が最小限になるほか、ギターと身体や支持具が密着せず音響的に分離(デカップリング)されているのでギターの響きを阻害しづらいです。
足台やストラップによる立奏と特徴を比べると以下の表のようになります:
| 奏法 | 支持方法 | 身体への影響 | 音への影響 |
| 伝統的な足台 | 脚と体で挟む | 脊椎のねじれや腰痛のリスクあり | 覆いかぶさるような形なので身体が振動を大きく吸収する |
| ストラップによる立奏 | 肩と首で吊る | 肩こりや首への負担のリスクあり | 裏板が身体と密着して振動が吸収される |
| UpGuitarbus | 三脚で自立 | ギターを支える負荷がない | 振動を抑制する要素が最小限 |
実際の演奏の様子はこちらの動画がわかりやすいでしょう:
ギターの響きを最大限引き出す固定方法
UpGuitarbusへのギターの固定はクランプ式になっています。
ギターの表面板へは柔らかいパッドを介してねじを締めることで固定します。表面板の端のごく一部にしか触れず、かつこの部分は表面板が側面板と接合されていてそもそも振動しづらい部分です:

裏板に支持具が接する面積が最小限であるのはもちろん、側面板とギターの間にも隙間があり、振動を最大限生かします。さらに、ギターに近い部分は木材を用いるこだわりようです:

胴の厚みが85mm以上であれば使用可能です。一般的なクラシックギターならまったく問題ないでしょう:

角度や高さの調整幅が広い
スタンド部分はどう見てもカメラ用の三脚です。おそらく、ここをオーダーメイドするとコストがかかりすぎるので一般的な部品を使ったのでしょう。

赤色が入った三脚である必要はあったのか?という疑問はありますが…。
とはいえ、三脚であるがゆえに高さの調整や角度の調整幅が広いのも事実です。また、かなり重いカメラを支えられる三脚に見えますし、三脚はそもそも重いカメラをぶらさずに支えるためのものなので安定性も抜群でしょう:

組み立て方法はこちらの動画で解説されています:
価格は390ユーロ、日本では未発売
気になる価格は390ユーロ(約7万円)です。これまで見た支持具の中でもかなり高価な部類に入ります。

こちらの記事でさまざまな支持具の価格を含めた比較を行っています:
また、日本では発売されておらず、オーダーフォームの選択肢に「日本」がありません。
とはいえ、クレジットカードやPayPalが支払いに使えるみたいですし、EU圏だけでなくアメリカには発送できるようなので、もしかすると問い合わせれば日本にも発送可能かもしれません。
逆のアプローチのLe Supportという支持具も
UpGuitarbusはギターを身体から分離することで自由を得るというコンセプトですが、逆にギターを身体に固定して一体感を生むというコンセプトの支持具「Le Support」もあります。
こちらの記事で解説していますのでぜひご覧ください:
もしかして自作も可能?
ここまで書いてて思ったのですが、三脚とアダプタ、固定用のパーツを用意すれば実は同じような支持具がDIYで作れる可能性はありそうです。
別の支持具ではSNS上で自作のギターリフトを披露している方がいました。ギターの支持具は原理は簡単なのでDIYしやすいのでしょう。
もちろん立奏となると安定性や耐久性の面ではいろいろと課題があるのでしょうが、DIYが得意な方は挑戦してみても面白いかもしれません。
立奏のその先へ
UpGuitarbusがこれまでにない画期的なギター支持具であることは間違いありません。
身体で一切支えない身体に密着させない、空中で弾くという新しい演奏方法により、ギターのこれまでの常識を覆す可能性があります。
一方、高価であるところと日本からは買いづらいところが難点でしょうか。
新しい支持具はそれを参考にまた新しい支持具を生むものです。この流れも期待して見守りたいと思います。





