クラシックギターに限らず楽器はそれなりに高いものですが、楽器には購入後に状態維持のためのランニングコストが発生します。このランニングコスト、楽器によって大きく違っていてクラシックギターではその中でも安い方であることをご存じでしょうか?安い場合は数千円、高い場合は数十万円に及ぶこともあるのです。この記事ではクラシックギターをはじめとする7種類のクラシック音楽楽器のランニングコストを比較し、なぜクラシックギターは維持費が安いのかを解説します。
【一目でわかる】主要クラシック楽器7種の年間維持費比較表
まずは各楽器のランニングコストを表にして紹介します:
| 楽器名 | 主な消耗品/メンテナンス項目 | 交換/調整の推奨頻度 | 1回あたりの費用相場(税込) | 年間概算コスト(趣味〜プロ) | 特記事項・コスト構造の特質 |
|---|---|---|---|---|---|
| クラシックギター | 全弦交換、全体調整、フレット擦り合わせ | 弦:1〜3ヶ月毎 全体調整:1〜2年に1回 | 弦代:1,500〜4,000円 全体調整:7,700〜16,500円 | 10,000円 〜 50,000円 | 弦代がコストの大部分。演奏者自身によるDIY交換が基本のため工賃がかからない。 |
| ヴァイオリン属 | 弓の毛替え、全弦交換、駒・魂柱調整、指板削り | 毛替え:年1〜4回 弦:半年〜年1回 駒調整:不定期 | 毛替え:6,000〜13,200円 弦代:6,000〜15,000円 駒製作:15,400円〜 | 20,000円 〜 100,000円以上 | 弓毛の摩耗が演奏性に直結。職人による馬毛交換工賃と弦代が双璧をなす。 |
| ハープ(グランド) | ペダルレギュレーション調整、断線弦張り替え、出張費 | 調整:1〜2年に1回 弦張り替え:随時 | 定期調整:27,500〜55,000円 出張費:5,500円〜 全弦セット:約60,000円〜 | 30,000円 〜 150,000円以上 | 47本の弦とペダル機構の精密調整が不可欠。重量ゆえ調律士の出張費が必須となる。 |
| 木管楽器 | リード購入、全体バランス調整、不良タンポ交換(全タンポ交換) | バランス調整:年1〜2回 全タンポ:3〜5年に1回 | バランス調整:5,500〜18,700円 リード箱:4,000円〜 全タンポ:33,000〜110,000円 | 30,000円 〜 120,000円以上 | リードの連続消耗と、呼気湿気に起因するタンポ劣化の定期リペア工賃が重なる。 |
| 金管楽器 | オイル・グリス類、ウォーターキィコルク、管内化学/超音波洗浄 | 洗浄・調整:1〜2年に1回 消耗品補充:随時 | 管内洗浄:9,900〜30,800円 コルク交換:880円〜 | 5,000円 〜 30,000円 | 構造が堅牢で木管・弦楽器に比べ維持費は最安水準。水洗いや注油はセルフ作業中心。 |
| グランドピアノ | 定期調律、整調(機構調整)、整音(音色調整)、技術者出張費 | 定期調律:年1〜2回 (プロは公演ごと) | 定期調律:14,000〜23,100円 整調・整音:10,000〜20,000円 出張費:0〜3,850円 | 20,000円 〜 80,000円以上 | 20トン前後の張力を受けるため定期調律が必須。ブランク期間に応じた割増料金あり。 |
| 声楽家 | 公式・練習伴奏者謝礼、防音練習室レンタル料、喉のケア | 伴奏・練習:毎月〜随時 コンディショニング:通年 | 伴奏謝礼:15,000〜20,000円/回 練習室:1,000〜3,000円/時 | 50,000円 〜 200,000円以上 | 物理的なリペア費はゼロだが、伴奏者手配代、練習場所の確保費、体調管理費が定常化。 |
【比較基準】クラシックギターの維持費構造とその強み
まずはこのブログのテーマでもあるクラシックギターについて、ランニングコストの構成を解説します。
主な費用は「弦代(消耗品)」!工賃がかからないDIY文化

クラシックギターのランニングコストが安い理由の1つは、消耗品である弦が他の楽器より安いところにあります。
最近は値上がりしたとはいえ1セット当たり1,500円から4,000円くらいであり、ヴァイオリンよりもかなり安いです。
もちろんヴァイオリンは交換頻度が低いので単純に比較はできませんが、気軽に交換できるのは間違いありません。
さらに、弦の交換は自分で行うのが一般的というのも強みです。同じ弦楽器であるグランドハープはプロに任せたり、出張メンテナンス時にやってもらうため高額になります。
以上より、クラシックギターのランニングコストはトータルだと趣味で弾いている方で年間1万円から2万円、プロでも3万円から8万円といった範囲に収まります。

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ただし「湿度管理」と「たまの全体調整」は忘れずに
ただし、クラシックギターは木製の楽器であり薄い木の板を使っているため、湿度管理を怠ると一気にランニングコストが跳ね上がります。
割れが発生すると1万円以上の修理費がかかりますし、何より大切な楽器が割れてしまったというショックが大きいです。
あとは、フレットのすり合わせやナット・サドルの調整や作り替えの費用も掛かるでしょう。
それでも他の楽器に比べればランニングコストは安い方といえます。

他のクラシック楽器の維持費事情
次にほかのクラシック楽器の維持費事情を見てみましょう。
ヴァイオリン属:弓の毛を放置すると弓が曲がる恐怖

ヴァイオリン属の維持費の中で大きな割合を占めるのは弦だけでなく、意外にも楽器本体ではなく弓にかかる費用も大きな割合を占めています。
弓には馬の毛が張ってあり、演奏とともに表面が摩耗します。すると松脂の保持力や引っ掛かりが低下するため定期的な張替えが欠かせません。
その頻度は一般の演奏家で年に1回、プロやハイアマチュアでは年に2回から4回が推奨されます。
弓の毛替えの怖いところは、張りっぱなしでも基本的には音が悪くなるだけの弦と違い、同じ毛を使い続けると弓が曲がってしまうリスクがあるという点です。
同じ毛を使っていると毛の本数が偏り、弓にかかる力が偏ってしまうことが原因なのだとか。このため、張り替えないほうがむしろお金がかかることもありそうですし、曲がりがきついと弓を買い替えることになるかもしれません。
年間のランニングコストは趣味で弾いている方で2万円から4万円、プロだと10万円を超えることも少なくありません。
グランドハープ:調律師を自宅に呼ぶだけで数万円!?

弦を指で弾くという意味ではクラシックギターに近い楽器であるグランドハープですが、ランニングコストははるかに高いです。
その理由は外からは見えない複雑な内部機械構造にあります。ペダル機構や音程精度の調整のために1年に1回から2年に1回程度の定期メンテナンスが必要とされ、その費用はグランドハープでは5万円にもなるとか。
さらに、47本ある弦は全弦セットで6万円から10万円ほどかかり、1本あたりでも高いものは1万円ほどするそうです。
弦の交換はプロに任せるのが一般的ですのでその費用も必要ですし、グランドハープは40㎏を超えるので持ち込みが難しく出張交通費も必要になります。また、日本ではハープ専門の調律師の数が少なく、予約枠の確保も難しい課題の1つです。
このため、ランニングコストは趣味で弾いている方でも年間3万円から6万円、プロだと15万円以上に達します。
木管楽器(サックス・クラリネット等):「リードガチャ」と「タンポの水濡れ」

木管楽器、特にリードを使う楽器は大きさの割にグランドハープ並みの維持費がかかる楽器です。
まず、リードの費用が重くのしかかります。1箱4,000円から6,000円で購入でき、その中には10枚のリードが入っていますが、その中に入っている「アタリ」のリードは2,3枚という、まさに「リードガチャ」の世界です。
クラシックギターの高音弦の音程がたまに少し悪いくらいで文句を言っていると怒られそうですね。
さらにリードは天然葦から作られており、数日から数週間で寿命を迎えるという、ほぼ使い捨ての道具です。
さらに、指でキイを押さえた時に実際に穴をふさぐ「タンポ」と呼ばれる部品は台紙、フェルト、革などからできており、吹くと自分の息の湿気で腐食します。
このため3〜5年ごとのオーバーホール(全タンポ交換)が欠かせず、5万〜10万円かかることに。
これらを合計すると1年間で4万円から12万円以上がランニングコストとして必要になります。
ちなみにリードやタンポを使用しないフルートの場合は15,000円から30,000円程度です。
金管楽器(トランペット・ホルン等):維持費最安クラス!ただし毎日の手入れは必須
最もランニングコストが低い楽器といって良いであろう存在が金管楽器です。
有機材料を含まず、金属で構成された堅牢な構造がその理由であり、定期的にかかるのはオイル・グリス類、水分を抜くためのウォーターキイコルク交換、内部の汚れやさびを除去する洗浄くらいです。
年間のランニングコストは趣味で演奏している方で5,000円から15,000円、プロでも2万円から4万円程度で維持できます。
ただ、メンテナンスはしっかり行わないと部品が固着して動かなくなるため、まめな手入れは必要です。また、音が大きいので練習場所の確保のためのお金がそれなりに必要かもしれません。
グランドピアノ:調律代2万円は高い?「整調・整音」の三位一体と放置割増金

グランドピアノは8,000点以上の精密パーツと20トンにも及ぶ弦の張力を抱える楽器であり、定期的な専門調律師の訪問が欠かせません。
グランドピアノの場合は単なる調律にとどまらず、美しい響きを維持するには鍵盤からハンマーに至る複雑な打弦メカニズムの寸法や動きを正す「整調」、ハンマーフェルトの硬さを針で微調整して音色を整える「整音」も必要です。
費用相場としては調律単体が14,000円から23,000円、整調や整音も行うと追加で1万円から2万円ほど必要になります。頻度は年に1回から2回ほどです。
また、調律師の出張費が必要になるほか、調律のブランクが空いた場合は割増料金が発生することも。
年間のランニングコストは趣味で演奏される方で2万円から4万円、プロや頻繁に演奏する場合で5万円から12万円といったところ。
さらにグランドピアノは木を使った楽器なのでギター同様湿度変化に弱く、ケースに入れるわけにもいかないため24時間体制でエアコン、加湿器、除湿器の稼働も必要になり、電気代も無視できません。
声楽家:「楽器代ゼロ」なのに一番お金がかかる!?伴奏者システム

ほぼ番外編という立ち位置ではありますが、声楽家のランニングコストについてです。
自分の身体を使って演奏するから無料!かと思いきや意外とランニングコストがかかります。
まず、声楽家は基本的にアカペラ(ソロ)ではなく伴奏付きで歌います。このため、本番だけでなく練習に伴奏ピアニストへの謝礼や防音スタジオのレンタル代が欠かせません。
こちらのサイトによると、コンクールや演奏会になると伴奏者への謝礼は15,000円から20,000円になるとか。
また、声帯のコンディションを常に保つには医療費や衛生費が不可欠です。耳鼻科での定期健診や吸入器など、月に数千円の単位で医療やケアの費用が継続発生します。
これらを合わせると趣味で歌っている方では年に5千円から10万円ほど、プロや音大生にもなると月に20万円から40万円もかかるのだそうです。
歌は楽器がいらなくていいなぁとは口が裂けても言えません。
比較して見えた!クラシックギターの維持費が安い3つの理由
以上からクラシックギターの維持費が安い理由は以下の3点にあると考えられます。
1. 出張費ゼロの「高い可搬性(ポータビリティ)」
1つ目の理由は持ち運びが比較的簡単な楽器であるという点です。
グランドピアノやグランドハープのように持ち運びが難しい楽器になると、メンテナンスのたびに人を呼ばねばならず、その出張費が必要になります。
また、ケースに入れられる楽器であるために湿度を一定に保つために24時間空調が必要ない点も見逃せません。
2. 「自給自足(DIY)」ができるメンテナンス構造

クラシックギターの構造はほかの楽器に比べれば単純です。
ヴァイオリンも比較的単純ではありますが、他の楽器は複雑な構造を持っており、自分でメンテナンスができる範囲が限られています。
クラシックギターは弦を交換するのはもちろん、人によってはフレットのすり合わせやナット・サドルの調整や作成、糸巻きの交換まで自分でやれるほどDIY性が高く、メンテナンス費用を抑えられるのです。
3. 構造的トラブルの少なさと手頃な維持費
構造が単純ということは、トラブルが少なくかつトラブルが起こってもメンテナンスの費用が安いことを意味します。
何より可動部がないことが強みです。鍵盤楽器や管楽器は可動部が多いですし、ハープもペダルが複雑な構造を持っています。
また、ヴァイオリンも構造が単純といいながら接着されていない魂柱や駒はずれたり倒れたりするリスクが高いです。
これらに比べるとクラシックギターは良くも悪くもかっちり作られた構造が単純な楽器であり、維持費を安く抑えられるのです。
まとめ:賢くメンテナンスして愛器と長く付き合おう
この記事で解説してきた通り、クラシックギターのランニングコストは他の楽器に比べて安く、手軽に始められて奥が深い素晴らしい楽器といえます。
この記事でクラシックギターを始めようとする方の心配が少しでも減れば幸いです。
ただ、維持費が安いといってもそれはきちんとメンテナンスして使っている場合の話であり、適当に扱っていると修理費が高くつくこともあります。
このサイトでも様々なメンテンナンス法を解説してますので、たとえば以下の記事の内容から始めてみてはいかがでしょうか?



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