糸巻きでギターはどこまで変わる?ヘスス・ベレサールのペグ交換を決めた理由と選定

ヘスス・ベレサール・ガルシアのプラスチックワッシャー付き糸巻き ギター用品
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私が現在メインで使っている楽器の1つがヘスス・ベレサール・ガルシアなのですが、中古で買ったときにどこのメーカーかわからない糸巻きがついていました。とりあえずは良いかと思ってしばらく使っていたのですが、どうにも調弦がしづらく操作性の悪さが演奏の没入感を妨げていました。そこで思い切って交換をすることに。その顛末を記事にしたいと思います。まずは交換を決めた理由と新しい糸巻きの選定についてです。

この記事を書いた人
かーる

クラシックギター歴35年、国際コンクール入賞経験を持つ演奏家・レビュアー。「ヘルマン・ハウザー2世」や「ヘスス・ベレサール・ガルシア」を愛用し、演奏者視点で忖度ない機材レビューを発信中。弦のレビュー数は70種類以上。
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ヘスス・ベレサール・ガルシアの糸巻き交換を決めた理由

私が購入したヘスス・ベレサール・ガルシアは中古だったのですが、謎のメーカーの糸巻きがついていました。

プラスチックのワッシャー付き

その糸巻きは木のボタンがついており、回転が渋いということはなく、一見悪くなさそうなのですがしばらく使ってどうにも我慢ができなくなりました。

よく見るとギアの根元に白いプラスチックのワッシャーらしき部品があります:

ヘスス・ベレサール・ガルシアについていた安物の糸巻き。プラスチックのワッシャー付き。

こんな部品がついている糸巻きはあまり見たことがなかったのですが、どうも金属の加工精度を柔らかいプラスチックで補うためのもののようです。

このプラスチックによってせっかくの振動が吸収され、本来の音が出せていないような印象を受けます。

もう1つのメイン楽器であるハウザー2世についているライシェル(ランドストーファー?)には当然そんな部品はありません。

ヘルマン・ハウザー2世のライシェルの糸巻き

糸巻きの音への影響なんて大したことないと思うかもしれませんが、以下の記事で解説した通り物理学と心理学の両面で科学的に影響があるのです:

また、ウォームギアを留めている部品も安っぽく、プレート部はしっかり磨いてあるのに上部は適当です:

ヘスス・ベレサール・ガルシアについていた安物の糸巻きのウォームギアを留めている部品

回転時の遊びが多い

もう1つの不満点は回転時の遊びです。

糸巻きには回転をスムーズにするためにギアとウォームの間に隙間があり、このために回転方向を逆にしたときにすぐには弦が動きません。

精度が高い糸巻きはこの隙間を極限まで小さくしており、あたかも遊びがないかのように感じます。

現在ベレサールについているペグはこの遊びが大きく、非常に調弦しづらいです。

また、ライシェルをつけているハウザー2世に比べ調弦の安定性が低いと感じます。これは上の記事で紹介したバックラッシュなどによるものでしょう。

ベレサールについていた糸巻きのメーカーは?

どこのメーカーかわからないと書いたベレサールの糸巻きですが、色々調べても結局わかりませんでした。

特徴からはどうも台湾のDer Jungの糸巻きのようにも見えます:

Home - DEJUNG ENTERPRISE CO., LTD.

Der Jungの名前はあまり知られていませんが、世界的なペグメーカーであるグローバーのペグの一部はDer Jung製です。また、日本ではヤマハが一時期Der Jungの糸巻きをOEM採用していました。

ただ、ウォームギアを留めている部分はカタログに掲載されているものよりもしょぼいのですよね。

Der Jungのペグは安いものだと1,500円くらいなのですがカタログに掲載されていないような安いモデルなのかもしれません。

日本で手に入りやすい廉価なペグというとアリアですが、該当するモデルが見つけられませんでした。

もしかすると廃盤になった昔のモデルなのかもしれませんが、その割にローラーポストが黒色というのが現代的です。

また、安いペグのわりにプレートを留めるねじがプラスじゃなく高級品で使われるマイナスというのも変わっています。

もし情報ありましたらX(旧Twitter)でDMやコメント、リポストいただくか、お問い合わせフォームからご連絡いただけるとありがたいです。

クラシックギター研究室のXアカウントのスクリーンショット
出展:クラシックギター研究室のXアカウント

交換する糸巻きメーカーの選定

糸巻きを交換するためには、交換先の糸巻きメーカーを選定しなくてはなりません。

ニッチなクラシックギター業界ですが、意外と糸巻きメーカーはたくさんあります。

以下が候補に挙がった糸巻きメーカーとその特徴です。

メーカー長所短所
ロジャース(Rodgers)イギリス/カナダ最高の巻き心地、美しい見た目非常に高価
グラフ(Graf)カナダ素晴らしい巻き心地、芸術的な見た目非常に高価
アレッシー(Alessi)イタリア高精度、派手な見た目ちょっと派手すぎる
フステロ(Fustero)スペインオリジナルでついているペグ、見た目の相性が最高壊れやすい、廃業していて修理が難しい
ゴトー(Gotoh)日本高精度、日本で手に入りやすく修理もしやすい、コストパフォーマンスが高い見た目が工業製品っぽい
交換する糸巻きメーカーの候補とその特徴

それぞれについて解説していきます。

ロジャース(Rodgers): クラシックギター用糸巻きの王様

ロジャースといえば昔からクラシックギター用糸巻きの頂点に君臨するメーカーです。

私は過去に試奏の時に1つだけ回し心地が違うギターがあると思ったらロジャースがついていたという体験をしたことがあり、精度だけにとどまらない「回し心地の良さ」にこだわっているメーカーだと思います。

見た目にも彫金や研磨、メッキが非常に美しく、ギターの格を上げてくれる糸巻きです。

日本でも人気があるので、クラシックギター専門店の中には部品を在庫しているところもあり、修理しやすいのもメリットの1つでしょうか。

ロジャースの欠点はただ1つ、その値段です。

昔から高価な糸巻きでしたが、ギターショップアウラのオンラインショップによると現在では30万円を超えています

ギターグッズ通販:ギターショップアウラ
クラシックギターとフラメンコギターの専門店です。ギター弦、楽譜、CD、DVD、ギターアクセサリ、ギターグッズ、コンサートチケットを取り揃えております。

30万円というと国産手工ギターのエントリモデルが買える値段です。

ネット情報ではベレサールのペグをロジャースに替えている方も複数いるので相性は決して悪くないです。

グラフ:芸術的な装飾が特徴

日本にはまだ入ってきていないカナダの糸巻きメーカーがグラフ(Graf)です。

その特徴は何といってもプレートの芸術性。公式サイトを見るとわかるのですが、色をふんだんに使った美しい糸巻きを製造しています:

Best Classical Guitar Tuners
Jorg Graf's classical guitar tuners are the ultimate achievement in tuning machine function and artistry. With many year...

クラシックギターの糸巻きはこれまで金属メッキや木材の色ばかりでしたので、こんなにカラフルなのは革新的です。

もちろん好きなデザインを発注することも可能で、世界に1つだけの糸巻きを作れます。もちろん精度にもこだわっていて評判も悪くありません。

ただ、予想されることではありますが非常に高価であり、オーダーした場合、最低2,300ドル(約36万円)かかると公式サイトに書かれており、ロジャースよりも高いです。

アレッシー:ロジャースより安くて美しく高精度

一昔前に登場したイタリアのアレッシーは、ロジャースよりも安くて高精度なことから日本で人気を博しました

ALESSI TUNING MACHINES
Tuning machines are more than accessories to the instrument

そのお値段は装飾なしのプレーンモデルで10万円を切ります。

無骨な印象を与えていたプレートのねじ部分に白蝶貝などの装飾を施したモデルがあるのも特徴で、これによりギターの印象を華やかで優しものに変えれくれます

フステロ:スペインの伝統的な楽器といえばこれ

フステロはスペインの糸巻きメーカーであり、スペインの楽器には昔からフステロが多くついていました。

調べてみるとベレサールもデフォルトはフステロだったようです。このためフステロをつければオリジナルの状態を取り戻せるかもしれません。

ただ、フステロのペグは見た目は素晴らしいのですが精度の評判がよくありません。また、よく故障するという話を聞きます。

さらに、フステロは2011年前後に廃業しています。公式には原因が発表されていませんが、もともとフステロ兄弟による小規模な工房だったので後継者がおらず、また他の糸巻きメーカーに対して精度やメンテナンス性が劣っていることが原因ではないかとされています。

しかしながら、不思議なことにいつまでたってもフステロの在庫がなくなりません。中古だけでなく新品も販売されています。

このためフステロに交換するという選択肢もないではないです。

ゴトー:最高のコストパフォーマンスとメンテナンス性

日本が誇る糸巻きメーカーのゴトーは、世界中で人気です。海外製のギターの中にもゴトーのペグがついているものがあります。

特に510シリーズは非常に高精度で評価が高いです。ちなみに「510」は社名の「ゴトー」から来ています。

その特徴は工場での精密生産と職人の手作業のハイブリッドです。

最新の工作機械を使って部品を生産し、その後組み立てや研磨、検品などは職人が手作業で行います。これにより均一な精度と高いコストパフォーマンスを実現しているのです。

日本メーカーだけに部品が手に入りやすく、いざというときは修理を依頼できるのも強みではないでしょうか。

また、ロッコーマンのオリジナルモデルとしてフステロっぽい見た目で精度が510シリーズと同等のRKシリーズというものもあり、これはなかなか興味を惹かれます:

ところでゴトーは510シリーズを超えるモデルとして、KO-GAプレミアムラインを最近発表しました。

しかしながら、第1弾であるKG01はなぜかクラシックギター用のペグなのに先進性を感じさせるカーボン素材+カーボン柄で評判はあまりよくありませんでした。

KG01-CA - G-GOTOH Official Web
Gear Ratio 1:16 カーボンプレート

KG01はないなぁ、と思っていたら最近第3弾のKG03が発売されました(第2弾は単式ペグ):

KG03 - G-GOTOH Official Web
Gear Ratio 1:20 ソリッドブラス・プレート メタルボールベアリングシステム

普通のクラシックギター用ペグはギア比が1:16程度ですが、KG03はギア比が1:20と高く、非常に高精度にチューニングできます。

また、見た目もシンプルで取り付けるクラシックギターを選びません。

どの糸巻きを選んだのか、こうご期待

糸巻きメーカーの選定は正直悩みに悩みました。

この記事で紹介していないメーカーもいろいろと調べましたし、同じメーカーの中でもどのモデルにするかは非常に悩ましかったです。

しかしながら、最終的にはメーカーとモデルを決め、発注しました。

果たして、30万円のロジャースに踏み切ったのか、それとも信頼の日本製を選んだのか。専門店での工賃を含めた全貌は次回の記事で詳しくご紹介します。

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