ストラディバリウスの音は化学的な処理によるもの?薄くても丈夫なスプルース(松)の表面板を実現

ヴァイオリンに使われるスプルース(松)の表面板 楽器
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ストラディバリウスやグァルネリといえば、ヴァイオリン弾きでなくても知っているヴァイオリンの名器。時折ものすごい値段で取引されたことがニュースになっています。そんなストラディバリウスやグァルネリの音の秘密がわかったという研究が公表されました。意外なことに、「化学的な処理」が音に影響している可能性があるそうです。

17世紀~18世紀のイタリアで生まれたストラディバリウスとグァルネリ

ストラディバリウスとグァルネリはいずれも、17世紀~18世紀のイタリア クレモナで作られたヴァイオリンです。

いずれも大変な価値があり、ストラディバリウスは2011年6月21日に1,589万4,000ドル(約17億円)で、グァルネリは2012年にそれを超える約1,600万ドル(約17億~18億円)で落札された記録があります。

ちなみに、ストラディバリウスはギターも作っており、5本と少数の断片が残されているそうです。演奏可能なものは1679年製の「サビオナリ」と呼ばれる楽器のみで、実際の演奏は以下の動画で見られます。

決定的な理由がわからなかったストラディバリウスの音の秘密

ストラディバリウスがなぜ音が良いのかについてはさまざまな研究がなされていますが、これまで決定的な理由は解明されていませんでした

一番有名なものは塗装に使われたニスに秘密があるというものでしょう。しかしながら、ニスに使用されていたのは松ヤニと油だけであり、特殊な成分は入っていなかったそうです。

また、板の厚みに秘密があるという説があり、現在ではストラディバリウスをCTスキャンにかけ、その板の厚みを3次元データとして数値化し、現代の精密な木工加工機械で再現した楽器も存在します。

逆に、ストラディバリウスの音が良いのは思い込みによるものだという説もあり、楽器の種類がわからないようにして実験をおこなうと新作のヴァイオリンのほうが評価が高かったという結果もあります。

表面板の薄さとそれを補う化学的処理が理由?

これに対して、テキサスM&A大学のジョセフ・ナジヴァリー博士らが、ストラディバリウスやグァルネリの音の良さは積極的な化学的処理が理由であるという研究結果を発表しました。

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ヴァイオリンの名器に使われたスプルースと現代のスプルースを比較

この研究では、ストラディバリウスやグァルネリの表面板に使われているスプルース(松)のサンプルを、現代のスプルース、18~19世紀のアンティーク楽器に使われたスプルース、古い建築物に使われたスプルース、そしてアンティーク楽器のメープル材と比較しています。

その結果、ストラディバリウスやグァルネリに使われているスプルースは現代の楽器に使われているものと同一の種類で、かつ構造的な劣化がほとんどみられなかったそうです。

一方、ほかのスプルースのサンプルには見られない、人工的に加工されたと思われる不自然な元素組成や酸化パターンが見られました

虫を防ぐための独自の化学処理方法を持っていた?

そこでさらに調査をおこなったところ、ホウ砂、亜鉛、銅、ミョウバン、塩化ナトリウム(食塩)と石灰水が木材の化学的処理に使われたことがわかりました。

ホウ砂は古代エジプトではミイラ化の際に使用されたことがあるほど歴史が長い防腐剤であり、殺虫剤としての効果もあります。ストラディバリウスやグァルネリが作られた当時はヴァイオリンの木材を食い荒らす虫が多くいたため、それを防ぐためにホウ砂を用いたのではないかとのことです。

また、ストラディバリウスやグァルネリでこの化学的処理の方法は異なっており、それぞれの製作家がそれぞれの秘密の方法を持っていた可能性があります。

化学的な処理が薄い表面板の耐久性を高めた?

この化学的処理は、さらに、表面板の耐久性を高めた可能性があります。

一般的なヴァイオリンに使われる表面板のスプルースの厚みは3mm~3.5mm程度ですが、ストラディバリウスはグァルネリはそれより薄い2.0mm~2.9mmしかありません。

表面板の厚みが薄いと響きはよくなりますが、耐久性は低くなります。

それにもかかわらずストラディバリウスやグァルネリが数百年後にも演奏可能な状態を保っているのは、化学的処理によるものである可能性があるとのことです。

たとえば、ミョウバンや食塩によって木質が安定化し、硬化したうえに、食塩の添加やアルカリ処理が乾燥による収縮を防いだ可能性があるとか。

研究チームは、今後も1650年~1750年にかけて製作されたさまざまなヴァイオリンを集め、サンプルを調査し、さらに化学物質がどのように素晴らしい音色に影響したのか調べる予定です。

クラシックギターにも応用可能?

クラシックギターには、ヴァイオリンと同じく、表面板にはスプルース(松)使われているものがあります。

また、表面板をできるだけ薄くするという方法は、現代的な楽器であるグレッグ・スモールマンをはじめとするラティスパターンの力木を使った楽器や、2枚の薄い板をサンドイッチ構造にするダブルトップ構造の楽器に通じるものがあります。

この研究がさらに進めば、その結果をクラシックギターの製作にも応用することができるかもしれません。

今後もこの研究の進捗に注目です。

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この記事を書いた人
かーる(クラシックギター研究室 主宰)

クラシックギター歴35年、国際ギターコンクール入賞。愛器「ヘルマン・ハウザー2世」、「ヘスス・ベレサール・ガルシア」とともに、クラシックギターのプレイヤー目線の実践的ノウハウを発信しています。

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