現代のクラシックギター弾きにとって爪は演奏に欠かせないものであり、常に良い状態に保つ必要があります。ところが、いつの間にか割れていた、剥がれていたという経験を持つ方は多いのではないでしょうか?その原因は実は使っている「爪やすり」にあるかもしれません。この記事ではなぜ従来の金属やすりが割れの原因になり、ナノテクノロジを応用したナノガラス爪やすりが爪に優しいかを解説します。
なぜ金属製爪やすりで割れや剥がれが起きるのか
まずは金属製爪やすりで割れや剥がれが起きるメカニズムを解説します。
切削力の高さが爪にダメージを与える
金属製爪やすりの特徴は切削力の高さにあります。ちょっと撫でただけで爪がどんどん削れるので爪の形を作るのに非常に便利です。
また、一般的に爪の長さ調整に使われる爪切りよりは爪に優しいため、従来は「爪切りを使うな。金属製爪やすりを使え」というのがクラシックギター弾きの常識でした。
しかしながら、この強力な切削力は爪切りほどではありませんが爪にダメージを与えます。
金属製爪やすりはダイヤモンドやサファイアの粒子が爪を研磨することで切削するのですが、粒子が粗いので爪を無理やり「引き裂いている」ような状態です。
実際に爪を削っていて引っ掛かりを感じるかもしれませんが、あの引っ掛かりがまさに無理やり爪の繊維を協力に引き裂いています。
引き裂きが3層構造の爪を剥がしてしまう
ここでなぜ爪が剥がれるのかという点を解説します。
爪は実は1層ではなく以下の画像のように3層構造になっています:

この爪の層が剥がれてしまうのが、いわゆる「爪が剥がれる」あるいは「二枚爪になる」という状態です。
層の間はタンパク質と脂質で接着されているに過ぎず、金属製爪やすりで爪を引き裂くと振動で簡単に剥がれてしまいます。
この振動は爪の先端だけではなく奥のほうにも伝わるので、知らず知らずのうちに爪にダメージを与えているのです。
層が剥がれから爪の割れに発展することが多いので、剥がれの防止は割れ防止にもつながります、
ミルクレープだと思えばわかりやすい
もう少し直感的な例えをするなら、爪はケーキの1種であるミルクレープだと思えばわかりやすいです。

ミルクレープはクレープの間にクリームをはさんだケーキのことを指します。
ミルクレープをステーキナイフのような歯のついたそれほど鋭利でないナイフで切ることを想像してみてください。
切れはするでしょうが、層の間のクリームが揺さぶられてクレープの重なりがずれてしまうでしょう。また、ずれは切っているところ付近だけでなく、奥にも伝わります。
このように金属製爪やすりは層になっている爪にダメージを与えているのです。
ナノガラス爪やすりはカンナのようなもの
一方、ナノガラス爪やすりはカンナのように爪の表面をそぎ落とすのでダメージが少ないです。
ナノガラス爪やすりとは
ナノガラス爪やすりとは、半導体製造技術にも応用されるレーザー加工技術やナノテクノロジを利用し、強化ガラスの表面に高精度かつ微細な突起を規則的かつ幾何学的に形成したものを指します。
こう説明すると難しそうですが、要は、
- 粒子が圧倒的に細かい
- 粒子の大きさが均一
というところがポイントです。
粒子の細かさは0.01mmと髪の毛の10分の1ほどしかありません。近いものでいえばサランラップの厚みです。
また、粒子の大きさが均一であるところも重要です。金属製爪やすりの場合は高い突起や低い突起が乱立しており、いわばのこぎりの歯のようになっています。
ナノガラス爪やすりは均一であるため、のこぎりではなく鋭い刃物のような構造なのです。
引き裂くのではなくカンナ掛けするナノガラス爪やすり
このような特徴から、ナノガラス爪やすりは爪を引き裂くのではなくカンナ掛けのようなスムーズな形で爪を整えられます。

ミルクレープのたとえでいえば、ステーキナイフではなく鋭利なケーキ用のナイフ、あるいは手術用のメスのようなものといえるでしょう。
爪の先端だけをスライスしていることから層にダメージを与えず、爪の割れや剥がれのリスクが金属製爪やすりよりも小さいです。
チェコグラスファイルとは別物
昔からクラシックギターを弾いていた方なら、20年ほど前に「チェコグラスファイル」というガラスやすりが流行したのを覚えているかもしれません。
たとえばこのようなものですね:
ナノガラス爪やすりはこの従来型ガラスやすりとは別物なので注意してください。
チェコグラスファイルとよばれるものは、ガラスの表面を酸などで削ってランダムな凹凸を作ったものであり、金属製爪やすりよりは粒子が細かいものの、ナノガラス爪やすりに比べると粒子がかなり大きいです。
爪への優しさ以外にもメリットが存在
ナノガラス爪やすりは爪へのダメージが少ないこと以外にもメリットがあります。
意外と安い
「ナノテクノロジ」というと高価な製品を思い浮かべるかもしれません。実際、クラシックギター用の初のナノガラス爪やすりと思われる「Soundfile」は非常に高価でした。
ところが量産が進んでナノガラス爪やすりの製造がコストダウンしたらしく、今では600円から買えます:
金属製爪やすりよりは高いですが、この程度であれば気軽に試せるのではないでしょうか。
爪の形を早く整えられる
粒子が細かいということは、爪の形を整えるのに時間がかかるのでは?と思うかもしれませんが、実際にはむしろ金属製爪やすりよりも早く爪が削れます。
その秘密は、粒子の密度とエネルギー効率にあります。
金属製爪やすりは粒子が粗いため、爪を削る「点」の数が少ないです。この「点」の1つ1つが爪を削る要素であり、金属やすりは粗く削ることで点の数の少なさをカバーしています。
一方、ナノガラス爪やすりは粒子は細かいですが、点の数が圧倒的に多いです。非常に多くの点、つまり刃が爪を同時にスライスしているのでトータルでの爪を削る力はナノガラス爪やすりのほうが高くなります。
また、金属製爪やすりの場合は目が粗いので削るためのエネルギーが「熱」や「振動」として使われてしまい、削るための力が限られます。
ナノガラス爪やすりの場合は粒子が爪の表面にピタッと吸い付くように密着し、エネルギーの多くが爪を削る力に使われるのです。
爪を磨く時間を短くできる
爪の形を整えた後は紙やすりなどで表面を磨く作業を行う必要がありますが、ナノガラス爪やすりはこの工程の時短につながります。
粒子が細かいのでナノガラス爪やすりで爪の形を整えた時点で爪がピカピカになっており、金属製爪やすりのように粗い番手から少しずつ磨いていく必要がありません。
人によってはナノガラス爪やすりだけで良いという人もいます。

個人的にはナノガラス爪やすりだけだとエッジがたちすぎているので、そこを丸める意味で2000番から8000番のやすりで軽く磨き、そのあとセーム革で仕上げています。
ギターを弾くまでの準備の時間を短くできるのは、時間の使い方の効率向上につながるでしょう。
ナノガラス爪やすりのデメリットはある?
残念ながらナノガラス爪やすりにもデメリットはあります。
ガラス製なので割れやすい
最大のデメリットは割れやすさです。
金属製爪やすりは踏んでもそう簡単に壊れたりしませんが、ナノガラス爪やすりは落としただけで割れることがあります。
ナノガラス爪やすりにはたいていケースがついているので、持ち運びの際はケースが必須です。
慣れるまでに時間がかかる

これまで金属製爪やすりを使っていた方がナノガラス爪やすりに乗り換える場合、慣れるまでに時間がかかります。
実際、私も2~3週間はかかりました。
最大の理由が「削れすぎる」点にあります。上述の通り金属製爪やすりよりも削る力が強いので、同じように使ったら削れすぎてしまいました。
また、金属製爪やすりに比べて分厚くてしならないので、削る感覚が違う点も慣れに時間が必要な理由の1つです。
コツとしては金属製爪やすりのように爪に押し当てて削るのではなく、なでるように使うということでしょうか。
いずれにせよ、最初は慎重に使うことをおすすめします。
演奏の感覚も変わる
爪の表面が金属製爪やすりよりもつるつるになるため、演奏時の感覚も変わります。全く同じ形に爪を整えるのが難しいというのも理由の1つかもしれません。
爪へのダメージは少なくても、演奏性が変わってしまったら元も子もありません。
どうしても合わない場合は金属製爪やすりに戻ったほうが良いのかもしれません。
偽物・粗悪品の流通
製品価格が下がってきたので最近はそれほど多くありませんが、偽物や粗悪品の流通にも注意が必要です。
極端に安いものは避け、信頼がおける販売元やレビュー数が多いなど慎重に選んでください。
また、上述のチェコグラスファイルのような従来型ガラスやすりと間違えないようにもしてください。
管理人が使用しているおすすめのナノガラス爪やすり
管理人が現在使用している、おすすめのナノガラス爪やすりはこちらです:
爪と同じく細かいところの作業を行うプラモ用であり、先端が細く持ちやすいなど工夫されています。
こちらにレビュー記事があるのでご覧ください:
爪が弱い人もそうでない人もぜひ試してほしい
爪が割れたり剥がれたりしてクラシックギターが満足に弾けないとストレスがたまります。
特に爪が弱い人はおすすめですし、爪が弱くない人も時短につながるなどメリットが大きいです。
これまで金属製爪やすりや従来型ガラス爪やすりしか使っていなかった方はぜひ一度試してみてください。
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