【クラシックギターの難易度】ピアノやヴァイオリンと比べてなぜ難しい?克服方法も解説

クラシックギターの難しさの画像 初心者向け
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クラシックギターの音の美しさは誰もが認めるところであり、比較的安い楽器が存在することから手軽に始められる楽器でもあります。しかしながら、まともに音を出すのが難しい上に、そこから先も上達するのが難しく、早々に挫折する方が多くいらっしゃるのも事実です。この記事ではクラシックギターがなぜ難しいのかをピアノやヴァイオリンと比較しながら科学的に解説します。また、どうやったらその難しさを克服できるかについても解説します。

この記事を書いた人
かーる

クラシックギター歴35年、国際コンクール入賞経験を持つ演奏家・レビュアー。「ヘルマン・ハウザー2世」や「ヘスス・ベレサール・ガルシア」を愛用し、演奏者視点で忖度ない機材レビューを発信中。弦のレビュー数は70種類以上。
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なぜクラシックギターは難しいのか

初心者はもちろん、長くクラシックギターを弾いてる方も「クラシックギターは難しい」と感じます。ただ、その難しさはどこにあるのか理論だてて説明するのはなかなか難しいものです。

まずは同じクラシック楽器であるピアノやヴァイオリンと比較したときのクラシックギターの難しさを解説します。

大きく分けて以下の4要素があります:

比較する項目ピアノヴァイオリンクラシックギター
初心者が曲を弾くまで鍵盤をたたけば誰でも音を出せるので容易。メロディーだけであれば数回のレッスンで曲を弾ける。極めて難しい。ボウイングと音程をつかむまで時間がかかる。中程度の困難さ。セーハの難しさや左手の指先の痛みとの戦い。
美しい音を出す難しさ指1本で音を出せ、かつ機械的に発音が保証されているので比較的簡単難しい。ボウイングによって音が大きく変わる。難しい。右手のミリ単位のずれが雑音に直結する。
多声音楽の演奏得意。一次元的な鍵盤と左右の手で独立した演奏により多声の構造を論理的に把握しやすい。基本的に単音楽器であり、多声的な演奏をあまり求められない必須だが極めて困難。二次元的なネック上で複数の独立した声部を同時に弾き分ける技術が求められる。
演奏時の身体への負担身体の正面に鍵盤があり、重力をフルに活用した演奏が可能顎と肩で挟み込む不自然な姿勢になるが、立奏によってある程度体を自由に動かせる足台などを使い抱え込むようにして演奏する姿勢の負担が大きい
クラシックギターとピアノ、ヴァイオリンの難易度比較

このうち、初心者が曲を弾くまでの難しさについては、セーハが難しいとか指先が痛いといったよく知られた話なので省略します。

美しい音を出せるがゆえに美しい音を出すのが難しい

美しい音についてですが、以前公開した記事にも書いた通り、クラシックギターは数ある楽器の中でも非常に美しい音を出せる楽器です:

なんといっても人の感情に直結した音で心を揺さぶる演奏が可能なところが強みなのですが、残念ながらそもそも雑音のない音を出すこと自体が困難な楽器でもあります。

ピアノであれば鍵盤をたたけばその先は機械的に処理され、初心者でもある程度均一な音を出すことが可能です。

ところがクラシックギターの場合、

  • 爪を各人に合った理想的な形と長さに整え、きれいに磨く
  • 指を先に、あるいは爪と同時に弦に触れ、その時の面積をできるだけ大きくする
  • 弦を表面板に対して平行ではなく、垂直に押し込むように弾く
  • 爪の上を弦がすべり、スムーズに抜ける

という非常に複雑なことをしないときれいな音が出ません

さらにここまでは基礎に過ぎず、人の感情を表現するには音色や音量、そしてその変化をミクロ単位に繊細に、そして振れ幅を広く大胆にコントロールする必要があります。

最初が難しい上に、その先も探求を続けなくてはいけない、なんとも厄介な楽器といえます。

二次元の指板が「ギター的思考(Guitar Thinking)」の壁を生む

もう1つ難しいのが指板が二次元であるという点にあります。

二次元空間であるギターの指板の画像

ピアノは鍵盤が一次元上に整然と並んでおり、視覚的・空間的に音程の把握が直感的です。

一方、ギターの指板は6本の弦と多数のフレットによって「二次元のマトリックス」として構成されています。

この結果、認知科学の研究によると、ギタリストは和音やスケールをピアノのように「絶対的な音符の連続」として認識しているのではなく、「幾何学的な形状」や物理的な運動パターンとして二次元的に概念化する傾向が非常に強いのだそうです(参考:Souza, 2021)。

上記の論文ではこれを「ギター的思考(Guitar Thinking)」と呼んでいます。

和声学や対位法といった音楽理論は「絶対的な音符の連続」として体系づけられているため、ギター的思考で譜面を認識すると柔軟な譜面の読解や、クラシック音楽の根幹である声部ごとの独立した理解が難しくなります。

ピアノで音楽理論を勉強した方が必ずしもクラシックギターをうまく弾けないのはこのあたりにも原因があるのかもしれません。

和声学や対位法といった上級者のスキルに限らず、初心者であっても、

  • どこにどの音があるか
  • 音から音に指をどのように動かせばいいか

といったことの把握が一次元の鍵盤より二次元の指板のほうが難しいのは直感的に理解できるかと思います。

指板という意味ではヴァイオリンも同じなのですが、ヴァイオリンは弓で弾くので1本あるいは近接した弦しか同時に扱わず、弦が4本しかないため、クラシックギターに比べれば負荷は小さいです。

多声処理の認知的負荷が大きい

クラシックギターはバッハのフーガに代表される、独立した複数の声部を一つの楽器で演奏できる楽器です。

ところが、ピアノであれば高音域を右手、低音域を左手のように、声部を物理的に両手に分割して処理できるのに対し、ギターの場合左手と右手をあわせて1つの音を出すことから、複数の声部が混在したときの複雑さが段違いです。

また、音を伸ばすには左手の指で弦を押さえ続けなくてはならず、各指の完全な独立性が求められます

さらに、同時に進行する複数の旋律線を絶えずトラッキングしなくてはならないという脳の認知的負荷が大きく、指だけでなく頭も必要な楽器といえるでしょう。

身体への負担が大きい

クラシックギターは演奏時に無理な姿勢や不自然な関節の動きを求められがちであり、身体への負担が大きい楽器といえます(参考:Muldowney and Green, 2013, Costalonga, 2009)。

最近ではできるだけ身体への負担を減らすために支持具を使うクラシックギター奏者が増えているのは、身体への負担に対する理解が深まったためです。

クラシックギターの難しさをどうやって克服するか

このようにほかの楽器と比べても難易度が高いクラシックギターですが、どうやってその難しさを克服すれば良いのでしょうか。

認知的負荷と身体的負荷をかけすぎない

頭と体が疲れている人の画像

とにかく練習時間を長くすれば早くうまくなるはずと考えている方がいますが、これは間違いです。

ギター的思考に代表される大きな認知的負荷が脳にかかるため、長時間練習すると集中力が低下し、かえって間違った弾き方(悪癖)を筋肉に刷り込むことになります。

研究によれば楽器は1日に4時間以上練習しても効果はほとんどなく、また2時間を超えるとむしろ効果が薄れ始めるのだそうです(参考:Kageyama, 2009)。負荷が大きいギターの場合はもっと短くてもいいかもしれません。

また、身体的な負荷を考慮すると1時間の練習につき15分の休憩をはさむことが強く推奨されます(参考:Muldowney and Green, 2013)。

楽器の演奏は健康な身体があってこそです。

漫然と曲を通して弾く練習をしない

楽器を弾いている人は曲を弾きたい方がほとんどであり、そのために「練習」というと漫然と曲を通して弾きがちです。

上記の通り練習できる時間は限られているため、自分がすでに弾ける箇所の練習を減らし、できない箇所を徹底的に部分練習するという効率の向上が重要になります。

弾けない箇所を練習するのはつらいのは確かですので、たとえば「この1週間でこの部分を弾けるようになる」といった短期間かつ小さな目標を立て、それをクリアすると目標が明確に定まって意欲的に取り組めるでしょう。

ギターやほかの楽器とのアンサンブルもおすすめ

クラシックギターは一人で複雑な曲を弾ける楽器であることもあり、リズムや曲の解釈が独りよがりになりがちな面があります。

もちろんそれで自分が満足できればいいのですが、上達していく中でいずれは壁に当たるかもしれません。

先生に習うというのはもちろん良い手ではあるのですが、ほかの手段としてはギターあるいはほかの楽器と重奏やアンサンブルをおこなうのもおすすめです。

ソロはどんなリズムでもどんな音色/音量でも好きに弾くことができますが、重奏やアンサンブルの場合はそうはいきません。正しいリズム、そろった音色、自分の役割を理解した音量など、必ずや上達の助けになるでしょう。

支持具やケア用品で難易度を下げる

身体への負担を下げるだけでなくより良い演奏をするためにも、優れた支持具やケア用品を積極的に取り入れていくといいでしょう

支持具はこちらの記事に日本で手に入りやすい支持具を中心に紹介しています。私が実際に使ったレビューも多数ありますので参考にしてください:

良い音を出すのに重要な爪については、こちらの記事で便利なグッズを紹介しています:

その他体のケアについてはこちらのカテゴリに多数記事があります:

体のケア
クラシックギターをはじめとする楽器を弾く際の健康に関する記事です。特に腱鞘炎に関する記事が人気です。

クラシックギターは難しい、でもやりがいがある

楽しそうにクラシックギターを弾く人の画像

この記事で紹介したように、クラシックギターはほかの楽器と比べても難易度が高い楽器です。

美しい音を出すのが難しく、指板は二次元で音楽と直結しておらず、身体への負担が大きい。

一方で、それでも弾く人が多いのはそれ以上の魅力があるからではないでしょうか。

できたときの喜びはほかの楽器以上ですし、脳への負担が大きいということはもしかすると認知能力の向上や維持にも役立つかもしれません。

がむしゃらに長時間練習するのではなく、短時間で効率よく、そして楽しんで上達していきたいものです。

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