以前の記事で検討を行っていたヘスス・ベレサール・ガルシアの糸巻き交換が完了しました。選んだペグはゴトー(Gotoh)の最新ペグである”KO-GA KG03“です。結果は大満足で、音質も操作性も劇的に変化しました。この記事ではKG03の紹介と、交換によって得られた効果を解説します。
安物ペグがついていたベレサール
糸巻きを交換したいと考えた動機は、中古で購入したベレサールについていたペグがあまりにも安物だったためです。
ポストの両端にプラスチック製の部品が使われているなど、ベレサールにふさわしいとはいえないペグでした。

実際に使っていてもチューニングしづらく、かつチューニングが狂いやすかったです。おそらく加工精度が悪く、かつそれを補うためのプラスチック製の部品も柔らかいのでずれやすいのでしょう。
また、音質面でもプラスチック製の部品が振動を吸収するなど、良い面はなさそうです。
このため、糸巻きの交換を検討していました。

新しいペグはGotoh KO-GA KG03に決定!
クラシックギター用のペグはあまたあり、弦のように気軽に交換できるものではないので色々と悩みました。
最終的には選んだのはGotohの最新ペグであるKO-GA KG03です。

KG03を選んだ理由
この糸巻きを選んだ理由は、コストパフォーマンスと修理の容易性です。
どう考えてもロジャースやグラフなど、糸巻きに30万円というのは高すぎます。糸巻きのことを馬鹿にしているわけではなく、ベレサールにならつけても良いのかもしれませんが、そこまでの価値を見出せませんでした。
また、海外メーカーの糸巻きだと部品の交換などの修理にも不安があります。Gotohは日本メーカーなので部品の取り寄せや交換が気軽にでき、長く使い続けられると思いました。
KO-GAシリーズの3番目の製品
KG03はGotohの最新ペグシリーズであるKO-GA(高雅)シリーズの3番目の製品です。
KO-GAについてGotohは、
高雅・KO-GAとは日本古来の言葉で気高く優雅である様を意味します。
従来のギターマシンヘッドの構造を根本から見直し、新構造の軸受を採用する事で同軸性、耐久性の向上を図りました。出典:Gotoh
と述べており、意欲的に取り組んだ製品であることがうかがえます。
しかしながら、その第1弾であるKG01は軽さを追求してカーボンを使ったのは良いのですが、クラシックギターと調和しそうにないカーボン柄のプレートが不評で使っている方を見たことがありません:

触ったことがある方の話では操作性は良いとのことでしたが・・・・。
第2弾のKG02はカーボンではなくなりましたが、単式しかありません:

一方、KG03は真鍮製プレートかつ3連という誰でも使いやすい仕様になっています。
ギア比が1:20
KG03はカーボン柄でなくシンプルなプレートかつ単式でないKO-GAシリーズの製品なのですが、特長はそれだけではありません。
最も大きな特徴は、ギア比が1:20である点です。
糸巻きにおける、ギア比とはつまみの回転数に対するポストの回転数を指します。 1:20の場合、つまみを20回転するとポストが1回転するということです。
一般的に、糸巻きのギア比が高くなると以下のようなメリットとデメリットが生まれます:
| 超微細なチューニングが可能 | ギア比が低いとちょっとつまみを回しただけでポストが大きく回るので音程が大きく変わるが、ギア比が高いとポストが少ししか動かないので「じわじわ」と音程を変えられる |
| バックラッシュ(遊び)の低減 | 遊びが大きいとつまみを回してからポストが回るまでの間にタイムラグが生まれるが、ギア比が高いと遊びが少なくなりダイレクトな操作感が得られる |
| 巻き戻りへの耐性が高くなる | 弦の張力によってギアが逆回転しようという力に対して耐性が高くなり、チューニングの安定性が増す |
| 弦交換時の回転数が増える | 弦交換など、ポストを何回も回転させなくてはいけないときに回す回数が増える |
| 重量増の可能性 | ギア比を上げるにはギアホイールを大きくするか、歯を細かくする必要がある |
| 価格の高騰 | 高い加工精度が求められるため高価になる |
このようにメリットが大きい高ギア比のペグですが、一般的なクラシックギター用糸巻きのギア比は1:14から1:16です。実際、Gotohの510やKG01/02は高級ラインですが1:16にとどまっています。
海外製の高級なペグでも1:18くらいしか見たことがありません。1:20というのはそれだけ製造が難しいのでしょう。
KG03はウォームギアを砂時計型にすることによってその問題を解決し、1:20という高いギア比を実現したのだそうです:

金属製ボールベアリングをポストに採用
また、KG03はポストに金属製のボールベアリングを採用しています:

昔の糸巻きのポストは直接ヘッドの木部に接しており、そこの摩擦で回転が重くなっていました。最近の高級糸巻きはこのようなベアリングをポストに仕込み、ポストと木部が直接触れ合わないようになっています。
510シリーズや他のペグもポストの先にプラスチック製ローラーがついていますが、こちらは樹脂と金属の間でわずかに摩擦が生じます。金属ベアリングはローラーの中に小さな球が入っており、滑るのではなく球が転がることで回転します。このため非常に摩擦が小さくて滑らかなのです。
また、木部にポストが直接刺さっていると湿度や温度によって木部が収縮し、回し心地が変わってしまいます。金属ベアリングに変えることで季節を問わず、常に安定した回し心地が実現可能です。
もちろん、適当なベアリングを入れたのでは精度や音が悪くなりますが、後述する通りKG03のボールベアリングは素晴らしい回し心地でした。
価格はロジャースよりずっと安い
KG03の価格ですが、現状公式サイトに明記されておらず、ショップでも掲載がありません。
私がこのペグに交換したときもショップに在庫はなく、Gotohに発注して取り寄せてもらいました。
このため、価格をここで書いていいものかわからないため正確な価格は伏せるようにし、今後どこかのショップに価格が掲載されたらそちらを紹介します。
とはいえ、思っていたよりずっと安かったです。従来のGotohのハイエンドモデルである510シリーズに黒蝶貝つまみをつけたものより、木製つまみをつけたKG03のほうが安かったのでむしろ驚きました(興味があればこのヒントで探ってみてください)。
ちなみにKG03には以下4つのつまみのオプションがあり、510シリーズ同様、白蝶貝や黒蝶貝を選ぶと値段が跳ね上がります:

私はベレサールとの相性も考え、木製のつまみを選択しました。
交換はショップ経由でクラシックギター製作家に依頼
クラシックギター糸巻きの交換は、軸間隔が同じならDIYでもできるとされています。
確かに同じ糸巻きに交換するのであればねじの場所やポストの太さが同じなのでそれも可能でしょう。
しかしながら、今回は軸間隔が同じとはいえ、メーカーすらわからないペグからKG03への交換だったため、ペグを取り寄せたショップ経由でクラシックギター製作家に依頼しました。
交換費用を公開しているショップの情報を見るとどこも5,000円もしないところが多いですし、取り付けによって音も変わりそうなので、大事なギターであればあるほどお任せしたほうが良いと思います。
ベレサールの糸巻きをGotoh KO-GA KG03に交換したレビュー
それでは、実際にベレサールの糸巻きをGotoh KO-GA KG03に交換したレビューをしたいと思います。
デザインはどんなギターにも合うシンプルなもの
上の公式写真でもわかるとおり、KG03のデザインは非常にシンプルです。
いわゆるクラシックギターペグには一般的に彫金が施され、華やかなデザインになっています。高級モデルでなくてもこの傾向は変わらず、なんらかの柄や装飾があるのが一般的です。
ところが、KG03はあえて真鍮製のプレートに彫金を施さずに使用しています:

ポストは黒色に塗られたアルミ製で、こちらもシンプルです(もちろんプラスチック製の部品なんてありません):

個人的にはこのシンプルなデザインは好きです。また、ベレサール自身も華やかな楽器というわけではないので、よく合っていると思います。木製のつまみも良い選択でした。
ただ、まったく派手さがないかというと、ギアの凹凸が光を反射し、それがプレートに投影されるさまは美しいです(写真より実物のほうが美しいです):

ロジャースやグラフ、アレッシーのように海外には手作業での美しい彫金を行っているメーカーが多数あり、言葉は悪いですがGotohがこれらのメーカーでデザインで戦おうとするのは難しい気がします。
Gotohの最大の特徴である精度の良さにコストを全振りしたKO-GA KG03、個人的には大好きです。
チューニングしやすさと安定性が劇的に向上
糸巻きの役割である調弦についてですが、狙い通りチューニングのしやすさと安定性が劇的に向上しました。
もともとついていたペグは回転が渋いということはないのですが、つまみを回したときの手ごたえがふわふわしており、遊びも大きく調弦しづらかったです。
KG03は遊びがほぼない上に1:20のギア比のため、合わせたいところにスッと音程が落ち着きます。
この合わせやすさは単にチューニング時間が短くなるというメリットだけではありません。ステージ上で音程が合わずに慌てるということがなくなり、落ち着いて本番演奏にのぞめそうです。

糸巻きと本番の緊張の関係についてはこちらの記事をご覧ください:

また、以前のペグの時は弾いているとすぐに調弦が狂っていたのですが、KG03にしてから明らかに狂いづらくなりました。やはり加工精度が全然違うのと、プラスチック製の部品がないためでしょうか。
音質も明らかに向上
糸巻きが変わるとギターの音が変わるという話は聞いていましたが、確かに音質が明らかに向上しました。
今までは弦を弾いたときにどことなく音がふらつくというか、地に足がついていないというか、そんな印象がありました。
それが、KG03にしたとたんに音に芯が生まれたといいますか、柔道初心者がいきなり黒帯になったかのようなどっしり感が生まれて驚きです。
また、ふらふらしなくなったのでタッチによる音質のコントロールがしやすくなったように思います。そしてコントロールがしやすいので弾きやすくなり、それでさらに良い音が出せるという好循環が生まれます。
糸巻きで変わるとは聞いていましたがまさかここまでとは思いませんでした。
今回はそれなりの高級ギターに安物ペグがついていたのを、高級ペグに変えたのでかなり極端なケースであることは確かです。ただ、ペグによって音がかわるというのは間違いないと思います。
ちなみに重さは旧ペグが82g、KG03がカタログスペックで81gなので、重さが変わったために音が変わったわけではなさそうです。

情報が少なすぎるのが難点
KG03自体に今のところ不満はないのですが、この糸巻きを選択するにあたって情報が少なすぎるのが難点でした。
510シリーズは多くのギターに採用されており、触れる機会が多く、ネット情報を含め使用している方の感想も集めやすいです。ロジャースなどの有名糸巻きメーカーも同様です。
KG03は新製品かつショップにすら並んでおらず、KG03を採用しているクラシックギターも今のところなさそうです(君島ギターのLuna Customがそれっぽいのですが。。。)。
このため、ある意味この糸巻きにすると決めるのはギャンブル的なところがありました。
良い糸巻きだと思うので、今後使う方が増えるといいなと願っています。
Gotoh KO-GA KG03への交換は大正解
結論として、ヘスス・ベレサール・ガルシアの糸巻きをGotoh KO-GA KG03に交換したのは大正解でした。
1:20のギア比やボールベアリングに代表される最新のハイエンド仕様に加え、定評あるGotohの加工精度で海外の糸巻きに全く負けない品質だと思います。
それでいて値段は海外の糸巻きよりはるかに安く、コストパフォーマンスは非常に高いです。
これまでGotohの糸巻きはデザインがなぁと思っていた方にも、非常にシンプルなデザインでおすすめできます。
もし糸巻きの交換を検討しているのであれば、ぜひGotoh KO-GA KG03を選択肢に入れることをおすすめします。






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