私はもともと足台でクラシックギターを弾き始め、色々な支持具を試し、その後足台に戻りました。ただ、最近加齢のせいか腰痛が再発しぎみであり、もう一度支持具に戻ろうかどうか迷っています。そこで最近の支持具事情を調べてみたところ、色々と進化していることがわかりました。この記事では自分の備忘録も兼ねて、最近どのような支持具が販売されていて、それぞれがどのような特徴があるかまとめてます。

クラシックギター用の支持具についてはこちらの記事でまとめています:
年を取ると腰痛は出やすくなる
腰痛が加齢とともに出やすくなるという現象には明確なエビデンスがあります。
加齢とともに慢性的な腰痛が増加
厚生労働省の2022年の調査によると、腰痛を自覚している有訴者率(人口1,000人当たりの症状を訴える人の割合)は以下のようになっています:
| 年齢 | 性別 | 有訴者率 |
| 全体 | 男性 | 91.6 |
| 全体 | 女性 | 111.9 |
| 65歳以上 | 男性 | 164.8 |
| 65歳以上 | 女性 | 182.8 |
ご覧の通り、全体に比べて65歳以上の方が腰痛を訴える割合は非常に高いです。
また、男性よりも女性のほうが腰痛を訴える割合が高いという調査結果になっています。
なぜ年を取ると腰痛になりやすくなるのか
日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン2019」によると、加齢に伴う椎間板の変性(弾力性の低下)は避けられないものとされています。
つまり、若いころは柔軟な筋肉と弾力のある椎間板が足台による「不自然なねじれ」を吸収してくれていたのですが、だんだんとその余裕がなくなり、腰痛が出やすくなるということですね。
若い頃は気合と柔軟性でカバーできていた足台のフォームも、医学的には椎間板の変性や筋力低下によって、身体への『負債』として蓄積されやすくなります。
ある程度年を取ってからのギターライフは、根性ではなく、物理(支持具)で解決するのが、長く弾き続けるための正解かもしれません。
※効果には個人差があります。痛みが強い場合は必ず医療機関を受診してください。
ギター支持具をつけると音が悪くなる?
ギター支持具は足台に比べて音が悪くなるという理由から、支持具の使用をためらっている方がいます。
しかしながら以下の記事で紹介したように実際には支持具をつけたほうが楽器はよく鳴り、その影響は伝統的な構造の楽器のほうが大きいです:

上の記事では足台が腰に悪い理由や、支持具で改善できる理由を論文を参照しながら紹介していますので、ぜひご覧ください。
【最新動向】進化系の支持具とその特徴
昔ながらのギター支持具にはギターレスト、ダイナレット、エルゴプレイといったものがあり、少し前の支持具にはギターリフト、Sageworkなどがあります。

こちらの記事で筆者の知る限りであらゆるクラシックギター用支持具をまとめています:
調べてみたところ、最近はこれらの進化系の支持具が登場していました。まずは進化系支持具の名前と元になっている支持具、特徴を表でまとめます。
| 支持具の名前 | ベースとなっている支持具 | 特徴 | 詳細・購入リンク |
| Woodside Guitar Support | ギターレスト(万力タイプ) | ギターの側面板をはさんで固定するタイプ。クランプ部分が可動式になりより安定した演奏が可能。ヘッド部分が傾き取り付けの自由度も向上。 | Amazon、メルカリ |
| EmbracingGuitar | ギターリフト | 背面取り付けタイプ。左足だけでなく右足にも支持具が乗る。吸盤が柔軟で体に追従しやすい。 | Amazon、楽天 |
| ギターバランスサポート | エルゴプレイ | 側面吸盤取り付けタイプ。ボールジョイントで前後左右に調整可能。 | Amazon、メルカリ |
| UpGuitarbus | – | ギターを空中に固定して立奏。まったく新しい支持具。 |
それぞれの詳しい解説をしていきます。まずは良いことばかりの紹介です。
Woodside Guitar Support(ウッドサイドギターサポート)
Woodside Guitar Supportは万力タイプのギターレストの進化系支持具です。
一見すると昔ながらの万力タイプギターレストと変わらないように見えます。
しかしながら、実はギターレストに比べて大きく進化しているのです。
大きな違いは以下3点です:
クランプをレバーで固定できる
ギターレストはギターへの取り付け時、ねじを回してギターを締め付けなくてはなりませんでした。
この作業、意外と面倒です。
これに対し、Woodside Guitar Supportはねじを締めた後、レバーを倒して固定します。
これにより一度最適な固定具合を見つけたら、次からはレバーの操作だけで取り付けと取り外しができるのです。
複数ギターを持っている場合はどうするの?と思っていたらちゃんとオフィシャルサイトに解説がありました。
まず1台目のギターの最適な取り付けを探ります。次に2台目に取り付ける際、ねじをどっち方向にどれだけ回したか記憶します。すると、ギターを取り換えるとき、この回転数だけねじを回せばすぐに取り換え可能になるとのことです。
クランプ部が可動式
ギターレストは表面板を2つの固定式の板で挟み込んで固定する支持具でした。
これに対し、Woodside Guitar Supportは板が少し回転できる構造になっています:

普通のギターの表面板と裏板は一見すると平行ですが、厳密にはわずかな誤差や凹凸があります。可動式の板で挟むことで違いを吸収してしっかり固定できるわけです。
特にこの構造が有効なのがレイズドフィンガーボードやアーチバックといった新構造のギターです。レイズドフィンガーボードはそもそも表面板が裏板に対して傾いていますし、アーチバックは裏板が局面になっています。

レイズドフィンガーボードやアーチバックについては以下の記事で詳しく解説しています:
こういった構造のギターでもWoodside Guitar Supportならしっかりと固定できるでしょう。
ヘッド部分を傾けられる
もう1つの特徴が、ヘッド部分を傾けられるという構造です:

出典:Woodside Guitars
こちらもギターレストは棒に対してヘッド部分がまっすぐにしかなりませんでした。
傾くことで以下の写真のように、ギターのネックを高くしてもしっかりと固定できます:

EmbracingGuitar ergonomic support(エンブレーシングギターエルゴノミックサポート)
EmbracingGuitar ergonomic supportはギターリフトの進化系支持具です。
従来のギターリフトも画期的でしたが、そこからさらに進化しました。
具体的には、ギターリフトと足は左足でしか接しません:
一方、EmbracingGuitarは足と接する部分が右足にまで伸びています:

これによりギターを足とまったく接することなく抱えることでき、このために「Embracing(抱きしめる)」という名前になりました。
さらに吸盤部分にも工夫があり、土台部分がギターリフトに比べて柔軟に動きます。これらの特徴により、ギターと一体となったかのような演奏が可能です。
また、取り付け部分にも工夫があり、ギターリフトは吸盤4個なのに対しEmbracingGuitarは3個、かつ取り付け位置ができるだけ裏板の外周になるようになっています。
裏板も振動しますので、吸盤取り付けの影響を低減するにはもともと振動しづらい外周部分に取り付けるのが望ましいです。
Guitto GGR-01 Guitar Balance Support(ギターバランスサポート)
GuittoのGGR-01 Guitar Balance Supportはエルゴプレイの進化系です。
従来のエルゴプレイは単純に板を締め付けるだけの調整しかできませんでした:
これに対しGuitar Balance Supportはボールジョイントの採用により、非常に柔軟な調整が可能です:

上の写真にはありませんが実は写真左側の吸盤もボールジョイントで動きます。
ボールジョイントは簡単に言うと人間の肩や股関節を機械で再現したものです。あらゆる方向に動くので、自分に合った角度や高さに簡単に調整できます。
しかも、写真右側のすべての可動部は1つのねじで固定されます。つまり、いろんな場所に可動部があるのだけど、1つのねじさえ動かせば調整と固定が切り替えられるのです。
これにより、ステージ上で自分の好きな角度に調整するのも容易でしょう。
また、ボールジョイントがベース部に近いところにあるので、エルゴプレイよりも小さくたためるのもメリットの1つです。
UpGuitarbus
UpGuitarbusはギターを人の上にのせて演奏するのではなく、台座に乗せることで空中に固定して演奏する支持具です。
詳細は以下の記事を参照ください:
それぞれの進化系支持具のデメリット
上ではそれぞれの支持具のメリットばかり紹介しましたが、現在私が本気で検討している中で思うデメリットを紹介します。
Woodside Guitar Supportのデメリット
ギターを壊さないか?
クランプで挟み込むという固定方法は、ギターの故障につながらないかという懸念があります。
クランプが強すぎてはギターの故障につながり、弱すぎては演奏中に外れるリスクが大きくなりそうです。
クラシックギターの構造上、側面板取り付け付近は強度が強いとはいえ相手は金属ですからね…。
できるだけ負荷を減らすためにセーム革などをはさむという手はギターレストの時代からよくやられているテクニックですが、これだと外れやすくなりそうですし。
塗装への影響がゼロではない
また、私は以前セラック塗装の楽器にギターレストを使っていたのですが、クランプを装着する部分に跡が残りました。
吸盤よりも塗装に優しいのは確かでしょうが、クランプタイプが全く無害なわけではありません。
EmbracingGuitar ergonomic supportのデメリット
サイズが大きくて重い
EmbracingGuitar最大の問題はサイズと重さです。ギターリフトも大きくて持ち運びに困ることで知られていますが、それ以上です:
| 比較項目 | EmbracingGuitar | ギターリフト(Big) | ギターリフト(Medium) |
| 外寸(最大幅) | 約45.5cm × 29.0cm | 約41.0cm × 26.5cm | 約34.5cm × 22.5cm |
| 本体重量 | 約500g | 約460g | 約380g |
45.5cmというサイズはA3(42.0cm x 29.7cm)の長辺よりも大きく、持ち運びにはB3(51.5cm x 36.4cm)が入るバッグが必要です。
調べてみたのですが、このサイズが入るバッグはなかなかなく、ボストンバッグくらいでないと選択肢があまりありません。
さらに重さも500gと、500mlのペットボトルと同じくらい、スマホ3台分くらいあります。
吸盤が塗装に優しくない
吸盤で取り付けるタイプはどうしても塗装への影響が気になります。
特にEmbracingGuitarやギターリフトのようなタイプは重みが吸盤の横方向にかかり、塗装を引きずって剥がすような力が働くため、塗装を痛めやすいです。専門的なワードでいうと塗装を引きはがす「剪断力」がかかるのですね。
同じ吸盤でもエルゴプレイやGuitar Balance Supportのように垂直に力がかかるほうが塗装には優しいです。こちらは吸盤が滑り落ちず楽、塗装には均一な圧縮力がかかるので攻撃力は低いといえます。
Guitar Balance Supportのデメリット
ボールジョイントの精度が十分か?
ボールジョイントは優れた機構ですが、精度が高くないと簡単にずれてしまいます。
演奏中にボールジョイントが緩んでしまったら演奏継続は難しいでしょう。
こればかりは実際使ってみないとわからないですし、個体差もあるかもしれません。
青い吸盤が気になる
吸盤の材質には大きく分けて2種類あります:
- ゴム:吸着力が強いが可塑剤が含まれていて塗装を痛める可能性がある
- シリコン:吸着力が弱めだが可塑剤がない
そしてGuitar Balance Supportの吸盤の写真を見ると、前後で材質が違うように見えるのです:

右(ギターのお尻側)は透明感があってシリコンゴムっぽいのですが、左(ギターのヘッド側)は違う素材のように見えます。
この画像だけではなんともいえないのですが、青い吸盤はゴムのような感じもします。
詳細なスペックで書かれていない部分なので何とも言えませんが…どうなんでしょう。
迷い迷って現在検討中
今回色々調べて分かったのは、保守的なことで知られているクラシックギター業界ですがその中でも支持具は進化を続けているということです。
ただ、いまだ完璧なものは存在せず、何かを取れば何かを失う気がします。
その意味では足台が一番無難なのでしょうが寄せる年波には勝てず…。今のところの有力候補は以下の2つです:
もう少し悩んでみたいと思います。

























































