大変残念なことにいつの時代も詐欺行為は尽きないもので、クラシックギター弦にも偽造品が出回っています。被害にあったという報告はSNSで定期的に投稿されています。特に最近は販売元が対面ではなくネットのケースも多く、偽造品が出回りやすいです。また、スキャンや印刷技術の発展によって「弾いてみないとわからない」ような精巧な偽造品も出回っています。偽造品の現状と購入しないためにできることをまとめてみました。
現実に存在する偽造クラシックギター弦
クラシックギター弦の偽造品は残念ながら実際に存在しています。
偽造品の需要の高さ
弦が偽造品業者に狙われる理由の1つが需要の高さです。
ギターを弾く人は世界中に多くいて、かつ人によっては週単位、あるいは月単位で弦を交換します。このためギター弦には常に高い需要があるわけです。
しかも、ほとんどの人はできるだけ弦の購入費用を安く抑えたいと思うので安い製品に対する需要が非常に高いです。
材料費が安いのでもうけやすい
さらに、ギター弦には材料自体は安いという特徴があります。
クラシックギター用のナイロンなど、原料費は原価に比べればゴミみたいなものでしょう。
ギター弦の価格は開発費、精度よく製造するための装置、検査、流通、人件費などの割合が高く、安く作ろうと思えばいくらでも安く作れるわけです。
これを正規品よりも少し安い値段で売ればしっかりと儲けが出ます。
見分けるのが困難で弾かないとわからないように
その昔、ビックリマンシールが流行した時には明らかに見ればわかるほど粗悪な印刷の偽造品が出回りました。
このような時代であればパッケージを見れば偽造品を見分けることが可能です。
しかしながら、現代ではスキャンや印刷の技術が発展し、比較的簡単に正規品に近いパッケージを作れるようになっています。ダダリオ自身が公式ブログで、偽造品を見た目だけで正規品と見分けることは不可能といっているほどです。
さらに、ネット通販の普及により届かないとパッケージが確認できないケースも増えています。
この結果、偽造品を弾いてみないとわからない、あるいは弾いても偽造品かどうか判別できなくなっているのです。
(今のところ)Amazonだから安心ではない
ネット通販サイトの中でも人気が高いAmazon。Amazonに対する信頼は厚いですが、弦の偽造品に関して言えば(今のところ)Amazonだから安心とは言えません。
Amazon以外も商品を販売
Amazonで商品を販売しているのは、Amazonだけではありません。他店や個人など、さまざまなセラーが存在します。
たとえば本記事執筆時点でダダリオ プロアルテ ノーマルはGuitar Shop UNLIMITedが出荷元/販売元でした:

※決してこのGuitar Shop UNLIMITedが怪しいと言っているわけではありません。
出荷元/販売元が偽造品を販売していた場合、Amazonで買い物をしても偽造品を購入することになります。
「混合在庫」の仕組みが偽造品を招く
ではこの出荷元がAmazon自身の場合は安心なのでしょうか?たとえば以下のダダリオ プロアルテ ノーマルの3セット入りパックはAmazon自身が出荷元/販売元になっています:

残念ながら今のところAmazonが出荷元/販売元でも安心できません(「今のところ」の理由は後述します)。
Amazonには「混合在庫」という制度があり、Amazonの倉庫に納入された商品は誰が納入したかにかかわらず一律に扱われます。
たとえばプロアルテ ノーマルをAmazon、Aという業者、Bという業者が倉庫に納入した場合、Amazonが出荷元/販売元であってもAやBが納入したプロアルテ ノーマルが届くことがあり得るのです。
混合在庫は2026年3月31日で廃止
弦に限らず混合在庫の問題は以前から指摘されており、AmazonはAmazon Transparencyラベルとう正規品を証明するラベルを導入するなどして対策してきました。
しかしながらこのラベルが導入されたのは一部のメジャーブランドだけで、クラシックギター弦でいうとダダリオくらいです。しかも、少なくとも私はAmazonから買った弦にラベルがついていたのを見たことがありません。
このためAmazonは混合在庫の制度自体を廃止することを発表しました。
発表によると制度は2026年3月31日に廃止されるため、これ以降に納入された商品についてはAmazon自身あるいは信頼できる業者のものであれば安心できそうです。
しかしながら、これ以前に納入されたものは引き続き混合在庫として扱われるため、在庫がはけるまでしばらくは同じ状態が続きます。
あまり売れない弦の場合はなかなか在庫がはけないでしょうから、果たしていつになるのか。。。/
弦メーカーによる対策
弦メーカーとしては偽造品が売れればそれだけ売り上げが減りますので、死活問題です。
しかしながら、残念ながらクラシックギターに関して言えば対策は進んでいません。
対策プログラムがあるのはダダリオくらい
数あるクラシックギター弦メーカーの中で、対策に本腰を入れているのはダダリオくらいです。
ダダリオは各弦に「Players Circle Code」といわれるシリアル番号を付加しています。この番号をダダリオの公式サイトで照会することにより、その弦が正規品かどうか判定可能です。
判定結果は以下の3種類に分かれます:
- Authentic(本物): シリアル番号が正しく、かつほかの人が同じ番号を登録していない
- Invalid(無効): 無効なシリアル番号で、偽造品の可能性が高い
- Already Used(登録済み): ほかの人がすでにそのシリアル番号を登録済みで、その弦あるいは前に登録した人が偽造弦を入手した可能性がある
照会はQRコードをスキャンするだけなので、Already Usedを増やして偽造品対策に協力するためにも、試してみてはいかがでしょうか?偽造品を報告すると、無償で正規品がもらえたという報告がSNS上にあがっています。
ちなみにこのコードは以前は10桁でしたが、より偽造品対策を強化するために今では19桁になっています。
ブラックライトでわかるアクイーラの弦
ちょっと面白い偽造品対策を行っているのがアクイーラの弦です。
こちらの動画にはアクイーラが製造したウクレレ用ナイルガット(Nylgut)弦にはブラックライトに反応する成分が加えられており、ブラックライトを当てた時に光るかどうかで正規品かどうかを判別できるのだとか。
この動画は10年以上前のものですし、クラシックギター弦も同様かはわかりませんが、こういったアプローチはありだと思います。
他のメーカーは注意喚起のみ
ダダリオの弦は人気があるので偽造品が出回ることが多いですが、他のメーカーの弦にも偽造品は存在するといわれています。
しかしながら、ダダリオほどの対策をしているメーカーは少なくとも私が探した中には見つかりませんでした。せいぜいが「Alibaba, Aliexpress, Temuなどから買わないように」という注意喚起をする程度です。
対策にはコストがかかりますので、コストと偽造品による被害を比べると体力がある企業でないと難しいのでしょう。
偽造品による被害を受けないために
では、偽造品の弦による被害を受けないようにするにはどうしたらいいでしょう?
信頼できる店で買う
まずは弦を信頼できる店から買うことが重要です。
大手の楽器店や昔からやっているクラシックギター店であればある程度信頼がおけるのではないでしょうか。
逆に、あまり有名でない店やよく知らない海外通販サイトは警戒する必要があります。
また、メルカリやヤフオクといった個人間取引サイトにも偽造品は存在していますので注意してください。

こちらの記事でおすすめのクラシックギター弦購入先をまとめています:
安すぎる弦を買わない
弦の製造販売は慈善事業ではないので、メーカー(と代理店、販売店)には利益が必要です。
したがって、一般的な相場に比べて安い弦にはそれなりの理由があります。
もしかするとセールや在庫処分など正当な理由があるのかもしれませんが、安すぎる弦は避けるほうが良いでしょう。
見た目もしっかり確認する
上のほうでパッケージの見た目での判別は困難と書きましたが、偽造品業者はできるだけコストを低く抑えたいので細かいところが違っている可能性があります。
新しいサイトや店から購入する場合、正規品と信じられるパッケージを残しておき、それと比較すると良いかもしれません。
弦そのものに関して言えば特に高音弦は見た目が違いやすいです。弦の透明度が均一でない、傷があるといったものは偽造品であるか、あるいは製造不良かもしれません。
低音弦も偽造品は端の処理が雑な場合があります。
偽造品かもしれない弦を買ったらメーカーに通報する
見た目であれ音であれば、もし偽造品かもしれない弦が手元に来たらメーカーや代理店に通報しましょう。
偽造品業者追放に協力できますし、もしかすると謝礼として正規品がもらえるかもしれません。
メルカリやヤフオクの場合、偽造品に対する補償プログラムがありますので、条件を満たせば支払った金額が返ってくるかもしれません(規定がいろいろあるので弦に使えるかどうかは不明です)。
偽造品に注意しながら気持ちよくギターを弾こう
残念ながら偽造品の弦は今後も出回り続けるでしょう。
しかしながら、個々人が偽造品を買わないことで業者に「もうからない」と感じさせることはできるのではないでしょうか。
偽造弦はギター弦を製造販売している方々の生活を左右し、最終的にはギターという楽器にかかわるすべての人が損をします。
正規品の弦を購入し、皆が気持ちよくギターを楽しめるといいですね。


